2010年12月の制作発表以来,ゲーマーの期待を一身に集めていた超弩級大作「The Elder Scrolls V Skyrim」(//。以下,スカイリム)の日本語版が,2011年12月8日にゼニマックス?アジアから発売された(PC版のパッケージは2012年1月26日発売予定)。
本作はBethesda SoftworksのRPG「Elder Scrolls」シリーズの最新作で,洋ゲーRPGと言えばまずこれを思い浮かべる人も多い,(以下,オブリビオン)の続編だ。今年最大の期待作であるのは間違いない本作。今回はコントローラを使ってをプレイしてみた。
剣と魔法とドラゴンの,正統派ファンタジーの世界へようこそ!
「オブリビオン」は,広大なオープンワールドを自由に移動し,1000人を超えるNPCから膨大なクエストを受け,自分だけの冒険物語を作り上げていくという自由度の高さが,プレイヤーやメディアに評価された名作だ。「スカイリム」はそんな前作のシステムをさらに進化させ,息を呑むほどに美しい世界を背景に,運命に従って冒険していくのだ。
……と,まずは持ち上げまくってみたが,実際のところはどうなのだろう? 筆者がオブリビオンをプレイした正直な感想を言えば「確かに面白い! でも日本人には合わないかも」だった。イベントシーンにムービーを挿入するシネマティックな演出に慣れると,オブリビオンの雰囲気は少々淡泊に思える。地味で打撃感のない戦闘は物足りなさにもつながり,自由度は,裏を返せば突き放した不親切さにもつながる。
■「The Elder Scrolls IV Oblivion」(2006年)
ではスカイリムはどうなのか? いきなり結論を言うと,スカイリムは単にオブリビオンのグラフィックスを綺麗にしただけのゲームではなかった。筆者がオブリビオンで感じた上記のような負の要素を見事に払拭し,操作しやすいユーザーインタフェースと,親切なナビゲーション,ヒロイックな設定を持つ主人公,エフェクトや演出で派手に見せる攻撃など,ダークブラッド RMT,すべての要素が面白くなった,究極の1本に仕上がっている。
「誉めすぎ」と言われてしまいそうだが,今のところたまに遭遇する不具合以外,これといった不満がない。トラブルについては,予告されているパッチに期待するとして,さっそくスカイリムのゲームシステムやコンテンツについて紹介していこう。
■「The Elder Scrolls Arena」(1994年)
「The Elder Scrolls」シリーズの記念すべき第1作
■「The Elder Scrolls II Daggerfall」(1996年)
シリーズ第2作。後に続く,数々の特徴が確立した作品
■「The Elder Scrolls III Morrowind」(2002年)
シリーズ第3作のMorrowindは,日本でもファンが多い
マンモスや吸血鬼が闊歩する
スカイリムの雄大な大自然に,ようこそ
スカイリムの舞台となるのは,タムリエル帝国の北方にあるスカイリム地方だ。雪に閉ざされた峻険な山がそびえ,山裾には針葉樹の深い森が広がり,そこかしこに豊富な水をたたえた急流が走っている。見ているだけでマイナスイオン効果がありそうなほどの雄大な風景だ。スカイリムの風景には,五感を刺激するリアリティがある。
スカイリムの世界は広大だが,細部まで執拗に作りこまれている
冷たい雪解け水が流れる川は,つかると足首まで凍りそうな冷たさ(のような気がする)。山を登ると激しい吹雪が吹き出し,筆者が以前訪れた秋田の山奥の温泉で「冬はほとんど毎日吹雪で,太陽を見る日は少ない」という話を思い出す。吹雪の中を歩いていると露天風呂に入りたくなるが,残念ながら,今のところスカイリムでは温泉を見つけられていない。吹雪が止んだとき一度だけ,オーロラが空を覆う神秘的な風景が出現し,心を打たれた。
実在の動植物も多数登場し,北欧やカナダにありそうな写実的な風景だが,マンモスや巨人が闊歩していたり,吸血鬼やスケルトンの戦士が襲ってきたりとファンタジー要素もたっぷりと盛り込まれている。あちこちに謎の遺跡や古代の墓,廃墟となった砦などがあり,ダンジョンも,長いものからお手軽なものまで,バラエティ豊かに揃い,探索への意欲をかきたててくれる。
晴れた夜には,美しいオーロラが見られることも
プレイヤーキャラクターとして使える種族は10種類で,キャラクターメイキングはオブリビオンより少し簡略化されている。「The Elder Scrolls」シリーズの少々クセのあるキャラクターは,日本だけでなく欧米でも賛否が分かれているが,MOD文化が深い欧米では,スライダーと格闘するよりMODを入れたほうが早いという考えなのかもしれない。もちろん,上記はPC版に限った話だが。
デフォルトでは,なかなか日本人の感性にバッチリフィットした顔は作りづらい。だがFPS視点なら手だけ,TPS視点でもキャラクターの後ろ姿を見るだけなので,実際のところ,プレイ中にはほとんど気にならないはずだ。
たまにアップにして「俺のキャラ,こんなだったっけ?」とギョッとするが,たとえいかついゴリラ顔でも,慣れるにしたがってだんだん愛着がわいてくるものだ。ところで,男性のハゲ頭のバリエーションだけやたら豊富にそろっているのは,なぜなんだろう。
ドラゴンボーンの秘密を解くか,反乱軍の勇士になるか
プレイヤーの選択次第で違ったストーリーが楽しめる
ゲームの冒頭,プレイヤーは罪人として処刑されそうになっている。同じ馬車には,先頃スカイリムの王を殺害した極悪人,地方首長のウルフリック?ストームクロークが乗っている。冒頭から固有名詞がズラズラ出てくるので少々面食らうはずだが,なにしろスカイリムは「The Elder Scrolls」シリーズの5作目。従来作のプレイヤーなら知っているかもしれない単語でも,本作が初体験の場合,完全においてけぼり状態だろう。
だが,安心してほしい。なぜならプレイヤーの分身となる主人公は,この地に来たばかりの異邦人で,プレイヤーと同様スカイリムの事情がよく分かっていないし,分からなくてもゲームの進行には差し支えない。それに,何がなにやら分からないほうが,異邦人になった雰囲気が楽しめるはずだ。
本当にストーリーが始まるのは,キャラクターメイキングが終わってから。処刑されそうになる主人公だったが,いきなり襲撃してきたドラゴンのせいで処刑場のある砦は大混乱に陥る。ここで主人公は,一緒に捕まっていたストームクロークの手下「レイロフ」か,帝国軍の兵士「ハドバル」のどちらかと一緒に逃げることになる。
筆者は勝手に「悪の帝国と正義の反乱軍」という図式だろうと想像していたので,罪人仲間のレイロフ側につこうと思っていたのだが,騒ぎに巻き込まれ,うっかりハドバルについていってしまった。しかし真面目な兵士であるハドバルの話を聞いているうち,実はストームクロークのほうが悪いのかも,と少し考えが変わった。スカイリムには善悪という明確な対立軸はなく,どの勢力についたかでNPCの反応が変わる程度だ。どちらの側にも道理があるので,プレイヤーは葛藤することになる。もっと言うと,こうした悩みを生み出す設定や演出こそがスカイリムの面白さでもある。
宿屋のたき火がこんなにありがたいなんて……
“自由度が高い”という言葉は,好き放題できるという意味に解釈されがちだが,同じ「自由度」という言葉を使うロボット分野では,関節の数を意味する。関節が増えれば増えるほど,ポーズや動きのバリエーションも増えるというわけだ。これと同じで,自由度の高いゲームは選択肢の多いゲームなのではないかと筆者は考えている。そしてスカイリムには,それこそ数え切れない選択肢が用意されており,これがプレイのバリエーションを無限に広げてくれるのだ。
もっとも,スカイリムにはしっかりとしたメインストーリーが用意されており,メインクエストだけに挑んで進める一本道RPGとしてのプレイも可能だ。
最初に訪れる大きな城,ホワイトラン以降の行動は完全にプレイヤーの選択に委ねられており,初回のプレイでは,メインストーリーである「ドラゴンボーン」の秘密を追っていく人が多いだろう。だが,その気になれば,帝国軍の軍人になったり,アラド戦記 RMT,逆にストームクローク軍に加わって反乱に手を貸したり,世俗から離れて魔法学校に入学したりといった選択も可能で,しかもそれぞれがメインクエストに負けないボリュームと,ドラマを持っている。
例えば,ホワイトランで受けられるサブクエスト「緊急指令」は,隠れ住む謎の女性と,彼女を追う謎の男達が登場する。どちらもそれなりにもっともらしいことを言ってプレイヤーに助けを求めてくるのだが,正解はゲーム中には用意されていない。プレイヤーが選んだ選択肢がそのまま解答になるからだ。筆者の場合,最初は女性に頼まれて追っ手の討伐に向かったが,向かった先で彼らに説得され,逆に女性を男達に引き渡してしまった。あの決断が正しかったのか,今でも考えることがある。
伝説のドラゴンボーンとして覚醒し
甦ったドラゴンを倒そう
ゲーム内では突発的に起こるイベントもあるが,その最たるものがドラゴンの襲撃だろう。スカイリムではドラゴンはただのモンスターではなく,特別な意味を持った存在だ。彼らは邪悪な存在として一度は滅ぼされたが,なんらかの理由で突然復活し,各地で村や町を襲撃し始める。メインストーリーは,各地で復活を遂げたドラゴンを倒しながら,突然の復活の裏に隠された秘密を解き明かすというものだ。
ドラゴンの襲撃が主人公の運命の歯車を動かす
クエストを進めていくと,ドラゴンは名前のある強力なボスとして登場してくるが,それ以外にも突然襲ってくる野良ドラゴンがいる。筆者が襲われたのは,ほんの軽い気持ちで山賊討伐のサブクエストにやって来たときだ。すぐ終わるからいいや,とセーブもせずに山賊と戦い始めたところ,いきなり背後から咆哮とともに空気を読まないドラゴンが襲い掛かってきた。
巨大なドラゴンとの戦闘はスカイリムに追加された新しく魅力的な要素だ。スカイリムはアクションRPGではないが,戦闘中もたびたび空中に舞いあがり,空から急襲してくるドラゴンとの戦闘には息詰まる緊張感がある。ドラゴンが吐くブレスを食らうとグングン体力を削られてしまうので,野良ドラゴンといえど気を抜くとアッと言うまに倒されてしまう。このときには必死で戦い,なんとか討伐できたが,まさに「死ぬかと思った」。ドラゴンは,一定時間の経過とともに出会う設計になっているらしいので,「ドラゴンは忘れたころにやってくる」を合言葉に注意を怠らないようにしたい。
トドメの演出では,カメラがキャラに近づいて迫力満点
ドラゴンを倒すと,「ドラゴンソウル」が入手でき,主人公はこれを使って「シャウト」という特別な能力を使えるようになる。最初のドラゴンを倒したときにその能力がアンロックされ,同時に主人公が実はドラゴンの力を自分のものにできる伝説のドラゴンボーンだったことが明らかになる。
シャウトとは,ドラゴンの声を使った攻撃や補助魔法だ。魔法として分類されているが,スタミナを消費するので体術的な側面もある。クエストでドラゴンを倒し,力の源を見つけたり,シャウト解放用のクエストをクリアすることで,使える技のバリエーションが増えていく。
最初に戦うドラゴン「ミルムルニル」 倒したドラゴンはその場で炎に包まれ,主人公はドラゴンソウルを吸収する
ヒーロー気分を満喫できる進化したバトルどんな能力を伸ばすか,Perkツリーの前で悩みまくれ
もちろん息詰まる戦いは,ドラゴンとの戦闘だけではない。前述したように,オブリビオンのときは,剣を振るっていても,打撃感が弱いため今一つ味気ないものになっていた。しかしスカイリムの戦闘はぐっと重量感が増し,重々しい武器で敵をなぎ倒すという感覚がよく表現されている。
攻撃ボタンを長押しすると,スタミナを消費して通常よりもダメージの大きな強攻撃を繰り出せる。うまくヒットさせると,カメラが正面に切り替わり,そこで自キャラがかっこいいフィニッシュモーションを繰り出してくれる。
攻撃はマウスの左右クリック,コントローラーの場合はFPSのように左右の「L3/R3」ボタンを使う。右手に剣,左手に盾を持っていれば攻撃と防御が可能になり,左手に魔法をセットすれば剣と魔法を駆使する魔法剣士になる。職業という概念はなく,持つ武器によって攻撃方法が変化するわけだ。
スカイリムの成長システムはスキル性で,そのとき使っている武器やアイテムに応じたスキルが上がっていくというものだ。スキルは全部で18種類あり,例えば,剣と盾で叩けば「片手武器」が,弓を使えば「弓矢」が,他人の家の鍵を開けまくれば「開錠」が,買い物をしまくれば「話術」が上がるという感じ。装備についても,プレートメイルを着ていれば「重装」が,ローブなら「軽装」が上がっていく。
さらに,それぞれのスキルにはなどと同じスキル強化能力「Perk」が用意されている。例えば防御スキルの「矢そらし」のPerkをアンロックすれは矢が当たったときのダメージが軽減するなど,スキル以上に重要な要素かもしれない。
スカイリムのPerkはツリー構造になっていて,レベルアップ時にもらえるスキルポイントでツリーの順番にアンロックしていく。振り直しはできないので,どれにするか,スキル表を見ながらうんうんと考えることになるだろう。
コンパニオンは頼りになる“俺の嫁”もちろん男性キャラや動物もアリ
スカイリムは一人で旅をするには厳しい世界だ。そんなときに頼れるのがNPCの「コンパニオン」だ。戦闘の手助けはもちろん,保管庫役として持ちきれない荷物を預かったりもしてくれる。
ダンジョン内にはたくさんの罠が仕掛けられている
コンパニオンは,ダメージを食らいすぎると死んでしまうが,メインストーリーで登場するリディアに関して言えば,筆者のキャラよりもずっとタフで,何度も地面に転がる筆者を横目に,現在に至るまで一度も体に土をつけたことがない。
道端のアクティブモンスターを放置したまま歩いていると,たまに,勝手に戦っているのか,姿を消してなかなか帰ってこないときがある。しばらくすると遠くから走ってくるのだが,なんとなく満足そうな顔をしているような気がするのは筆者だけだろうか?
コンパニオンとして人間1人,犬1匹を連れて歩けるが,犬の代わりに馬を連れていくこともできる。普段は移動手段として使える馬だが,正式な手順を踏んで入手した馬(つまり盗んだのではない馬)は,一緒に戦ってくれるようになる。放っておくと,勝手に近場の敵を倒しにいったりとなかなか好戦的だ。馬がはぐれてしまった場合,高速移動でワープすればワープ先で再会できる。
鍛冶屋「この剣を作ったのは誰だぁ!」目指せ,スカイリム1の生産職人
冒険だけでもやることがありすぎるほどのボリュームだが,本作には生産や採集も完備されている。生産は,鍛冶,革細工,錬金術,調理,そしてアイテムに能力をエンチャントする符術とこちらも非常に盛りだくさん。材料は店買い,敵からのドロップ,採集,そこらに転がっているものを盗む,など取得の方法も多種多様で,中にはツルハシがないと採集できない,といったものもある。まるで鉱山だ。
「符呪」で何の変哲もない指輪にステータスアップの属性を追加
生産の中でも筆者が注目したいのが,「符呪」というエンチャントだ。スカイリムの世界には,役に立つのか立たないのかよく分からない無数のアイテムが存在する。例えば「金の首飾り」は本当にただの金の首飾りで,これといったステータスアップ効果はない。しかしそんなアイテムに「符呪」を施すことで,突然素敵なエンチャントアイテムになってくれるのだ。エンチャントの材料は,武器や防具を解体して入手するので,途中から飽和気味になって放置しがちな武器や防具にも使い道ができる。
薬を作れる錬金術では,3つの材料を組み合わせることになるが,レシピは存在しない。素材ごとに「体力回復」や「毒」などといった属性があり,同じ属性をうまく組み合わせることで,それに応じた薬が出来上がるというわけだ。例えば,ベラドンナとトリカブトなど,聞くからに毒ができそうだ。錬金術用の台を見つけたら,とりあえず適当に組み合わせて試してみよう。
スキル画面は,そのスキルの守護星座をかたどってある
いつまで遊び続けても終わりが見えない奥の深さ“究極”という称号がふさわしい,歴史に残る1本
ここまで読んだ人は,本作にどういう印象を持たれただろうか? え? 面白そうだけど,全部どこかで見たようなシステムですって? そう,まさにそのとおり。スカイリムには「斬新な○○システム」は存在しなかった。その代わり,時間をかけて育てられてきたオーソドックスなコンピュータRPGの姿を,究極まで突き詰めている。
オートセーブが多い昨今,スカイリムではうっかりセーブを忘れて時間を無駄にしたりといったことが起きる。また,街の人に1人ずつ話を聞いて回ったりするのは,最近のRPGが「煩雑さ」として切り捨てている部分だが,それも残っている。そういうまだるっこしさや不親切さを含めて,RPGとはこういうものだと主張しているようだ。
広大な世界に点在する大小の街。街に暮らす人々,そして人々を取り巻く多くのさまざまな問題。そんな広大で奥の深い世界を,伝説の「ドラゴンボーン」として,特殊能力シャウトを駆使して冒険しよう。一度でもプレイすれば,どうして世界中のファンやメディアがこぞって高い評価を与えているのか,しっかりと分かるはずだ。
クエストに挑み,ドラゴンを倒して,「ドラゴンボーン」の力を強化しよう
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